第3話では、効き目からみたオイル添加剤の良し悪しを中心に書きました。
今回は、オイル添加剤の分類と傾向、
効きやすいバイク、クルマについて書いてみようと思います。
ただし、私は化学については基本的にシロウトです。
一般の方より多いであろうオイル添加剤の使用経験と、ライターゆえの探求心、
周囲から入るインプレや業界裏話がベースになっています。
従って、突っ込みが甘い部分もあるかと思いますが、悪しからずご了承下さい。
オイル添加剤は大きく3種類に分けられます
オイル添加剤には、
潤滑性や酸化安定性、剪断安定性といった、オイルの基本性能を高める働きをするタイプと、
エンジン各部の摩擦面に作用して、オイルとは別の潤滑性に優れた膜を形成するタイプの、
2種類に大別することができます。
さらに後者は、金属表面に別の物質による潤滑被膜を形成するタイプと、
金属表面自体を潤滑に向いた状態に改質するタイプの2種類に分けられます。

左からニューテックNC-80(補助系)
ルーキーUSA・パフォーマンスベーシック(補助系)
デュラルーブ(コーティング系)
トライボテック(コーティング系)
スーパーゾイル(改質系)
IXL(改質系)
雑誌で説明する都合上、私は、
オイルの基本性能を高める製品を”潤滑補助系”、
別の物質による潤滑被膜を形成する製品を”コーティング系”、
金属表面に直接作用する製品を”金属表面改質系”と呼んでいます。
ここでもその名称で話を続けますが、
これはあくまでも私の分類方法で、公式なものではありません。
●潤滑補助系オイル添加剤の特徴
潤滑性や高温安定性、せん断性など、
元々オイルが持っている性能を高める添加剤で、
例えば潤滑性を高める製品はモリブデンやセラミック、PTFEといった固体潤滑剤、
高温安定性を高める製品は高分子ポリマー、
せん断性を高める製品には亜鉛系化合物、
というように、その目的によって主成分が異なることがあります。

オイル用に開発されたものの、高価で使って
貰えない添加剤が単品で市販された典型が
このルーキーUSA。使った人間に聞いたとこ
ろ、ミッション用は結構効いたそうです。
第3話で石油メーカーの技術者の話としてお伝えした、
「オイル添加剤はズルイですよね。ある特定の物質を増量したりして、手っ取り早く性能を上げちゃうんですから」
というのがまさにこれで、
オイル用に開発された添加剤の新製品だったり、
コストが高くて使って貰えないオイル用の添加剤だったり、
中には、すでにいろいろなオイルに使われている添加剤そのものだったりすることもあります。
体感効果はほとんどありません
価格は総じて安価で、
ものによっては500円ぐらいからありますし、
高品質な有機モリブデンを配合したものでも、
5000円を超えることは希です。
気になる効果ですが、
基本的にオイルの安全マージンを高めるものですから、
劇的な体感効果が得られることはほとんどありません。

ニューテックは、効果が体感できる数少ない
潤滑補助系添加剤といっていいでしょう。
ただ、金属表面改質系並みの価格と、多め
の添加量がネックでしょうか。ルーキーUSA
ともども、固体潤滑剤は含まれていません。
それでも、エンジンノイズなり、パワー感なり、燃費なり、
何らかの客観的な効果を望むなら、
固体潤滑系の製品を選んだ方がいくらか希望が持てると思います。
ただし、湿式クラッチのバイクは、
クラッチの滑りを誘発する可能性が高いので、
固体潤滑剤を使った添加剤は避けた方がいいでしょう。
即効性があって、ナラシ運転も原則として不要ですが、
オイルを交換したら効果がなくなるのが普通です。
中にはオイル寿命の延長をうたった製品もありますが、
基本的にはオイルの性能が高まるだけですから、
とても1万kmも2万kmも無交換で使い続ける気にはなりません。
●コーティング系オイル添加剤の特徴
テフロン(PTFE)やチタン、セラミック、ボロンといった金属や樹脂などを主成分として、
金属表面に潤滑性に優れる被膜を形成するのがこの種の添加剤です。
被膜形成には少なくとも1000km程度の走行距離を必要とするのが普通で、
オイル交換をしても数万kmは効果が持続する、
長寿命も大きなセールスポイントです。
このタイプではテフロンを主成分にした製品を数多く見かけますが、
このテフロン系の添加剤には賛否両論あります。
よく知られているように、テフロンは非常に摩擦係数の低い物質ですが、
その反面で、金属表面、特に摩擦面に定着しにくく、
オイルとも混和しにくい性質を持っています。
また、テフロンが高温で気化したときの高い毒性も問題になって来ています。
意に反してエンジンオイルやオイル添加剤に大量に使用されたため、
製造元のデュポン社では「テフロンはエンジンオイルやオイル添加剤の成分として有効でない」と公表し、
潤滑剤向けの販売を停止し、テフロンの名称使用を禁止しました。
ところが、すでにテフロンを使用する添加剤メーカーから
一斉に「不当な販売制限」であると訴えられ、
デュポン側がエンジンに有害である客観的な根拠が示せなかったことで、
現在も、不本意ながらオイル添加剤用にも販売している、
といういきさつがあります。
マイクロロンは使い方に注意が必要です
テフロン系オイル添加剤といえば、マイクロロンが有名です。
私自身使ったことはありませんが、
周囲の評価と、バイク向けの総発売元であるDr.スダの話を聞く限り、
それほど悪い印象は持っていません。
しかし、現実にはこれも評価が真っ二つに分かれています。
実は、マイクロロンは内容量の約80%が洗浄剤で、
添加すると一時的にオイルの粘度が低下し、油膜の一部も洗い流されるため、
その時に負荷をかける走りをすると、焼き付いたりするケースがあるようです。
そのため、正規ルートのマイクロロンには、添加量とナラシ走行の方法が、
細かく指定されています。
特にバイクの場合は、
オイル全容量が少ない上に高回転まで回りますから、
用法を守らないと大きなトラブルにつながる可能性もあるので注意しましょう。
テフロン系といえば、
以前乗っていたオデッセイに、
スリック50というオイル添加剤を入れたことがありますが、

新車から5000kmで、2回目のオイル交換と同時にスリック50を添加。
9000kmを過ぎたあたりで取材でクルマの下に潜ったところ、エンジン
ブロックとミッションケースの接合面からオイルが漏れているのを発見
しました。ディーラーに修理に出してもなかなか止まらず、結局5〜6
回出した覚えがあります。もちろん、クルマの個体差もありますが、ど
うもタイミングが良すぎます。言い切ることはできませんが、それ以来
スリック50に手を出していないのは確かです。
新車時に添加したこともあってか、効果はまったく感じられませんでした。
それどころか、添加後4000kmぐらいでオイルパンからオイル漏れが始まり、
ディーラーに修理に出してもなかなか直りませんでした。
オイル漏れと添加剤との因果関係は不明ですが、
疑ってしまったのも事実です。
最近になって知ったのですが、このスリック50、
パッケージを次々と替えて販売されている、
ちょっとヤバイ系の添加剤らしいですね。
コーティング系オイル添加剤には謎が沢山あります
前回の冒頭でも少し触れましたが、
オイル添加剤は詳しい成分や作用のプロセスが公開されていない製品が多く、
このテフロン系のように、理論上は説明がつかないにも関わらず、
それなりの効果を発揮する製品があったかと思えば、
まったく効かない製品があったり、
どうにもつかみ所がありません。
私の知っている範囲では、
液化チタンを主成分にした添加剤は、
被膜ができるプロセスが理論的に裏付けられているとういうことで、
それなりに効果を期待してもいいと思います。

トライボテックは、液化チタン系が配合された添加剤です。
以前は8万km(10万kmだったかな?)持つ、という表記が
あったはずなのですが、今売られている製品には書かれ
ていません。一説ではPL法の絡みだとか。
私は、仕事上、好き嫌いに関わらずテストしなければいけないケースが多々ありますが、
プライベートで選ぶ場合は、成分に関わらず、
粉末が沈殿している製品は避けるようにしています。
当然説明書には「よく振って、添加後すぐに数10分走れ」などと書いてありますが、
例えば龍角散のような微粉末だとしても、固形物には変わりませんから、
どんなによく振って、数10分走ったところで、
エンジン内でオイル中に混和するとは思えませんし、
粉末がオイルの中に浮遊している状態で、
金属面に膜を作れるとはどうしても思えないからです。
バイクの場合、
そもそも固体潤滑剤を使った添加剤はクラッチを滑らせる可能性を秘めていますから、
説明書に2輪対応と明記されている製品、
あるいはマイクロロンのように、
バイクショップが責任を持って販売している製品以外は、
手を出さない方がいいでしょう。
●金属表面改質系オイル添加剤の特徴
コーティング系のように潤滑に優れる被膜を形成するのではなく、
金属表面そのものを潤滑に優れる状態に改質する。
具体的には金属表面のミクロレベルの凹凸を平滑に馴らすのが、
この類のオイル添加剤の特徴です。
ただツルツルに馴らすだけでは、
逆にオイルどまり(オイルが金属表面に付着すること)が悪くなって、
潤滑性が落ちてしまいますから、
平滑化すると同時に、
耐熱性や極圧性を与える製品が中心になっています。
添加後数10分である程度の効果は出るものの、
完全な改質までには数10kmから100km程度の走行が必要で、
オイル交換後もある程度は効果が持続するものの、
コーティング系ほどは持たない、というのが普通です。
製品としては、ミリテック1やゾイル、
プロロング、IXLなどがこの部類に入ります。
TVショッピングで知られるモーターアップや
デュラルーブもそうだったと記憶しています。
塩素化炭化水素に注意が必要です
原則として固体潤滑剤を含まず、沈殿物もないため、
潤滑経路を詰まらせたり、バイクのクラッチを滑らせたりする心配はなく、
その面では安心して使えますが、
この類の添加剤によく使われていて、
最近問題視されているのが塩素です。
塩素化炭化水素、ハロゲン化炭化水素、
塩素化パラフィンといった名称で呼ばれるこの塩素系化合物には、
簡単に言ってしまうと、金属表面を柔らかくする働きがあるため、
ノイズを減少させたり、回転フィーリングを軽くスムーズにする効果があり、
金属同士が強くぶつかり合う場所の潤滑性、
すなわち極圧性にも優れています。
そのため、元々オイルに添加されていることもありますが
塩素は元来金属を溶かす性質がありますから、
長期的にはパーツ間のクリアランスが広がったり、
エンジン内部の腐食を進めることになります。
また、環境問題が叫ばれる今日では、熱による塩素ガスの発生も気になります。

一時期TVショッピングでも売られていたデュラルーブ
は塩素系オイル添加剤の典型で、かなりの量が含ま
れているということです。効果は4万〜8万km持続する
という触れ込みですが、????という印象です。
オイルの場合は、含まれている塩素系化合物の量は僅かで、
それを補う成分も含まれているので心配ありませんが、
そこに塩素系化合物を多量に含んだ添加剤を加えると、
均衡が崩れて塩素の弊害が出て来る可能性があります。
そのため、塩素系化合物を使用しているオイル添加剤には、
耐摩耗剤としてモリブデンなどを併用している製品もあります。
しかし、そもそも高い極圧性が要求されるのはミッションやデフで、
エンジン内部の潤滑にそれほど極圧性は必要とされません。
従って、塩素系化合物を主体にしたオイル添加剤は、
エンジンオイルに添加してもあまりメリットはありません。
ミッションも一緒に潤滑しているバイクの場合は、
それなりのメリットもありますが、
金属表面を溶かすという現実と、効果の大きさを比べると、
あまりオススメはできません。
モリブデンが配合されていればいたで、クラッチが滑る心配も出て来ます。
オススメは非塩素系です
一方、非塩素系の製品ですが、
これは金属表面、あるいはオイル中に浮遊する金属イオンと
有効成分が化学的に結合し、
摩擦面に吸着するような形でミクロレベルの凹凸を埋め込み、
平滑化する作用を持っています。
塩素系のように結果的に凹凸を削って馴らすのではなく、
凹みを埋めて馴らすのが大きな特徴で、
にわかには信じられない作用ですが、
オイル消費が減ったり、圧縮が回復したりする現実を見ると、
信じざるを得ない、というのが実情です。
固体潤滑剤も塩素系化合物も使っていないため、
バイクのクラッチを滑らせたり、
エンジン内部を腐食させる心配がありませんし、
私のテストした中では効果もかなり高く、
現時点では理想的なオイル添加剤だと思っています。
難点を上げるとすれば、
比較的高価なことと、あまり持たないことです。
ただし、長持ちしないのは塩素系も同じで、
デュラルーブではありませんが、もしこの類の添加剤で、
「1度の添加で効果は5万km以上!」などと公言している製品があったら、
話半分ととらえた方がいいでしょう。
オイル添加剤がよく効くケースと効かないケース
同一の添加剤をいろいろなバイク、クルマでテストしていると、
よく効きくパターンと、思ったほど効かないパターンが、
おぼろげながら見えてきます。
あくまでも私個人の所見ですが、
参考にしていただければと思います。
そこそこ距離を走ったシンプルなエンジンにオススメです
まず走行距離ですが、
これは多く走っている方が効果が出やすい傾向にあります。
摩耗やカーボン等の堆積などによるパワーロスやフリクションは、
走行距離がかさむに連れて増えていきますから、
走行距離が多いほどオイル添加剤の働ける余地が増えるわけで、
必然的に効果が出やすくなるわけです。
目安としては、バイクで2万km、クルマで5万kmというところでしょうか。
ただし、さらに距離を重ねて、
機械的にオーバーホールの時期を迎えているエンジンに関しては、
いくら優れた添加剤でも回復させることはできません。

テスト車の1台であるEP82スターレットの
1300・ソレイユ。基本設計が古く、シンプル
で、走行距離も4万3000kmオーバー。添加剤
にとっては理想的ともいえるエンジンで、予想
通りIXLの添加で劇的に変わりました。
次にエンジンの種類ですが、
オイル添加剤、特にコーティング系と金属表面改質系の製品の主目的は、
すべてフリクションの低減ですから、
元々フリクションの大きいエンジンの方が効果が出ます。
新型車よりも旧型車の方が、バイクよりもクルマの方が、
効く要素が大きいですし、
バイクだけで見るなら、
レーサーレプリカ系よりもネイキッド系やオフロード車の方が良く効きます。
とすると、クルマでもスポーツカーより普通のセダンの方が、
と思われるかもしれませんが、
現実にはそれほど変わりません。
というのも、
バイクでは、最新のレーサーレプリカモデルは、
シリンダー内壁に特殊なメッキを施すなど、
フリクションを徹底的に減らしていますが、
クルマの場合は、
バイクに比べて排気量に圧倒的な余裕がありますし、
ターボも使えますから、
例えばスカイラインGT−Rやスープラにしても、
そこまでフリクションを意識していないためだと思われます。

私の所有するホンダCBR250RRは、MAX1万9000回転
という、クルマしか知らない方には信じられない超高回転
型エンジンを搭載しています。ここまで回るエンジンに、
オイル添加剤が働ける余地はほとんど残っていません。
最後に、これはIXLのテストから得られた傾向なのですが、
今のところ、ホンダの4輪車全般とスズキの軽自動車では、
他のメーカーのクルマに比べて思ったほどの効果が出ません。
理由をいろいろと考えてみたのですが、
両メーカーともバイクを生産しており、
クルマの設計にもバイクの基準がある程度適用されていて、
他メーカーのエンジンに比べてフリクションが少ないからでは、
という結論に達しました。
ただ、これは走りの面で効果が体感できるかできないか、という観点で、
燃費が上がっていることからも、ちゃんと仕事をしていることは確かなようです。
思った以上に長くなってしまいましたが、
皆さん、ついて来ていただけたでしょうか?
オイル添加剤についてはこの辺で終わりにして、
次回からは、本道のメンテナンスの話に移りましょう。