第3話 ライターになるまで

第1話、第2話と、ライターの厳しい一面を紹介しましたが、
大変なことばかりではとても20年もやってられません。
バイクなりクルマなりが好きなことが大前提ですが、
それなりに楽しいこと、オイシイこともあります。

ライターになるきっかけや、
一本立ちするまでのプロセスは人によって千差万別ですが、
今回は、期せずしてこの業界に飛び込み、気が付いたら20年も経っていた、
私個人の体験をかいつまんでお送りしたいと思います。


ひとくちにライターといっても千差万別です

ライターへの門戸は常に広く開いていますが、
アルバイトレベルで終わるか、ライターで食っていけるかどうかはその人のスキルにかかっています。

これからの文章を読んで「へぇ、いいなぁ」などと思って安易に飛び込まないでください。
私は今でも「運が良かった」と思っていますし、
……もしモーターマガジン社に来られると私の仕事が減るかもしれませんからね。(笑)


こんなにおいしいバイトがあるなんて!

さて、私がこの世界に入ったきっかけですが、
今から約20年前の1981年、思い焦がれたRZ250を買って毎日ひたすら乗り回していた大学1年の頃、
当時同居していた姪っ子の幼稚園の友達が隣のマンションに住んでいて、兄貴夫婦と家族ぐるみでつき合っていました。
その子のお父さんがオートバイ誌の編集部員で、
「今度取材があるんだけど、一緒に行ってビギナーの立場でインプレしない?」と誘ってくれました。

その取材のことは今も鮮明に覚えていますが、
発売されたばかりのGSX400Fと、先行のXJ400D、Z400FXの対決という企画で、
1泊2日で軽井沢の星野温泉まで行きました。
新しいバイクには乗れるし、温泉に泊まってうまいメシは食えるし、
本にも載って、しかも20年前で日当1万円ですから、
「こんなにいいバイトがあるなんて!」とウハウハでした。

原稿を書かせて貰えるようになったのは、それから1年ぐらい後です。
原稿とはいっても、読者から来た手紙を詰めたり伸ばしたりして、決まった行数に合わせるリライトという作業ですが、
自分の書いた文章が本に載るのは嬉しいものでした。
その後、新製品紹介や昔のメカ解説の焼き直しなど、
原稿仕事がポロポロ入って来ましたが、
まだまだライターと呼ぶにはほど遠いレベルでした。


ロードレース、これが今の私のベースです

転機が来たのはロードレースに絡むようになってからです。
RZ250やCBX400Fの登場を機に、1982年頃から急速にロードレース人気が盛り上がり、
私もその例に漏れず83年の鈴鹿8耐と全日本500ccクラスのお手伝いメカニックを経て、
84年から先輩のライターを巻き込んでロードレースを始めました。

当時のオートバイ誌は、ビギナー向けの総合誌としてロードレースからは一歩引いたスタンスを取っていたのですが、
我々が「インサイドレポートやるからページちょうだい!」とあまりにうるさく言ったせいか、渋々ページをくれました。

最初は年に数回、活版ページ(ザラザラした藁半紙のページです)でのスタートでしたが、
準備段階から実戦まで、実体験を元にレポートしていくスタイルがウケたのか、
読者はもちろんバイクメーカーやパーツメーカーからも注目を集め、
不定期から連載、活版からモノクロページ(白黒のツルツルしたページ)、ときどきカラーへと、躍進していきました。

必然的に原稿を書く機会も増え、収入もいくらか増えていきましたが、
それ以上にレースにかかる出費が多く、
楽しかったけれど金銭的にはいちばんつらい時期でした。

その後、転倒で大きなケガをしたのと、
ライセンスが上がって経済的に続けられなくなったのとで、ライダーからは引退。
87年からはメカニックに転身して、
いつの間にか増えたチーム員のマシンの面倒見るようになり、
同時にそのインサイドレポートと全日本選手権のレースレポートをするようになりました。

別に仕事のことを考えていたわけではなく、単純に好きでやっていたのですが、
このレース参戦に始まって、メカニック兼レースレポーターとして全日本選手権を転戦するうちに、
オートバイ編集部からは「ロードレースやメカニズムに関しては安藤がいちばん知っている」という評価を得るようになり、
さらに4輪雑誌の編集部に移動した元オートバイ編集部員からも、
メカニズムや洗車、車検といった類の仕事が舞い込むようになり、
ようやくライターとして一本立ちできるようになりました。


今でもスキルアップは欠かせません

ひょんなきっかけでこの業界に飛び込んでから、
何とか食えるレベルになるまで約6年。
女房を貰えるレベルになるまでさらに5年。
私自身「貪欲さが足りなかったなぁ」と思うこともありますが、
我ながらよく続いたものだと思います。

ライターは己のノウハウを切り売りする商売で、
知識やノウハウの面で一般読者に先を越されたら立場がないと私は考えています。
ですから、メカニズムにしても、工具やケミカルにしても、
アンテナを張り巡らせて日々新しい情報を吸収する毎日です。
半年間講習に通って取得した3級2輪整備士の資格も、
「メカニズムやメンテナンスに関して能書きをタレるための下地」という思いからでした。

その道のプロから話を聞き、そのままを文章にして読者に伝えるのもライターの仕事ですが、
「ライター側もある程度の知識を持っていないと、どこが優れているのか判断できない」というのが私の持論です。
実際に記事を読まれる読者の皆さんはどう思われるでしょうか?