第5話 ニューモデル発表会 その2

第4話に引き続き、ニューモデル発表会の話です。


試乗後の個別インタビューで、ライダーの資質が問われます

一夜明けると、いよいよ本番の試乗会です。
朝食後、ホテル前に設営されたテントの前に集合し、
「周辺道路はこんな状態です。このルートが気持ちよく走れます」といった、
簡単な説明を受けた後、試乗に出発します。

試乗用に用意されているバイクは多くても10台ぐらいなので、
一度に全部の媒体には行き渡りません。
そこで午前、午後の2回、場合によってはさらに2分割して4回に分けて試乗するのですが、
その順番というのが、どのメーカーの試乗会でもだいたい決まっています。

1回目の1号車が「オートバイ」、2号車が「モーターサイクリスト」、3号車が「ヤングマシン」
というのは固いところで、どうも発行部数とか雑誌の歴史に準じているようです。

確かに、80年代のバイクブームの頃、
「オートバイ」はオバケ雑誌と呼ばれるぐらいダントツに売れていました。
その後ブームの終焉とともに発行部数も落ちて、
他誌とも昔ほどの差はないのですが、
未だに1回目の1号車は必ず「オートバイ」です。

名誉なことではあるのですが、
例えば時間に厳しい制約のあるサーキットでの日帰り試乗会で、
朝、予期せぬ渋滞にハマった時などはかなりアセリますし、
2月、3月の試乗会だと寒かったり、
もしコケてしまうと、後の進行に影響しますし、
現実にはあまりいいことはありません。

そんなこんなで、1時間半ぐらいの試乗時間の間に、
走りや止まり、部分の撮影とインプレ取りを済ませて会場に戻るのですが、
会場に戻ると、今度は技術者の方々からの質問攻めに合います。

エンジンから足回り、その他の使い勝手まで、
思うままにインプレッションを伝えるわけですが、
技術者の方は、開発段階でテストライダーの意見などから
良いところも悪いところも分かっているわけですから、
あまり的外れなことは言えません。

サーキットでも走れば、足回りや車体のネガティブな部分も見えやすくなりますが、
あくまでも一般道で、他のクルマとの混合交通の中で、
その傾向を感じ取らないといけないわけですから、
鼻歌混じりで流しているわけにはいきません。

だいたい、今のバイクは、一般道を普通のペースで走った程度で、
ネガティブな面を露呈するほど低レベルな造りはされていないですから、
重箱の隅をつつくようなインプレになっちゃうんですよねぇ。

このインプレッションについては、
第6話・インプレッションライダーの回でも触れたいと思っています。



1000万円ぐらいかかってるのかなぁ・・・・

レーサーレプリカ全盛の頃は、サーキットやテストコースでの発表会も結構あって、
開発スタッフが密かにラップタイムを計測していたり、
雑誌ごと、ライダーごとに「勝った、負けた」などと言っていたものですが、
レプリカが衰退した今では、
レーシングマシンの試乗会以外にサーキットを使うことはほとんどなくなってしまいました。

発表試乗会の規模自体も、
バイクブームの頃に比べるとかなり小さくなったようですが、
それでも、シャトーテル赤根崎や松崎東急ホテル、リゾナーレ小淵沢、
大磯ロングビーチ、八ヶ岳ロイヤルホテル、浜名湖ロイヤルホテルといった、名うてのホテルを使い、
運送業者を頼んで10数台のバイクを運び込み、
スタッフを含めれば100人を超える人間を泊めて、メシ食わして、酒飲まして、ノベルティグッズまであげて・・・・
ザッと計算しても数100万円から1000万円ぐらいかかっているのではないでしょうか。

そこまでしても、売れないバイクは売れないわけですから、
メーカーも大変だと思います。



4輪の試乗会には1度だけ行ったことがありますが・・・・

でも、バイクなんかまだ可愛い方で、
売れ線の4輪になるとハンパじゃありません。

発表試乗会自体は、招待する雑誌屋の数が多いだけで、
やることも、かける費用もそれほど変わらないようですが、
トータルの宣伝費が並みの額じゃありません。

伝え聞いた話ですが、
ホンダの新型シビックは、新聞広告用に用意した金額が2億円!
トヨタの新型カローラは、新聞、テレビ、ラジオ、雑誌、その他全部ひっくるめた広告予算が10億円!!だとか。

その金額にも驚きますが、
それだけの金額を投下して、回収できるのはもちろん、なおかつ儲かるんですから、
4輪市場って、やっぱりスゴイですよね。

私の20年のライター生活の中で、
たった1度だけ4輪の発表試乗会に行ったことがあります。
もうかなり昔のことなので書いちゃいますけど、いすゞ・ビッグホーンのハンドリングbyロータスだったと記憶しています。

グレード追加だったせいもあると思いますが、
日程は日帰りで、
当日昼過ぎに、カメラマンと2人で会場の富士急ハイランドホテル入り。
用意されたコーヒーを飲みながら技術説明のビデオを見て、
河口湖まで走ってインプレを取り、
湖畔で撮影して、ホテルに戻っておしまい。

「4輪の試乗会ってどんなお土産くれるのかなぁ」と楽しみにしていたのですが、
帰り際に貰った袋の中身は、
クレヨンとサインペンと落書き帳と・・・・
こっちも目が点になりましたが、
渡した広報部の方もバツが悪そうに「お子様にでも差し上げて下さい」と言ってました。
ちなみに、当時、私はまだチョンガーでした。